■初秋の有珠善光寺
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江戸時代に蝦夷三官寺の一つとして建立された古い歴史のあるお寺さんである。
何といってもこの200年ほどの間、有珠山の麓にあり、7,8度の有珠山の噴火活動にもめげずに往時の姿をとどめてくれていることがありがたい。
以下、伊達市の、有珠善光寺に関する説明を引用させていただくと、
* 有珠善光寺1000年の歴史
天長3年(826年)、比叡山の僧であった慈覚大師が、自ら彫った本尊阿弥陀如来を安置し、
開基したと伝えられています。浄土宗のお寺です。
慶長18年(1613年)、松前藩5代領主慶広が如来堂の再興を図りました。
その後、文化元年(1804年)、時の将軍徳川家斉公が、蝦夷三官寺の一つとして、正式な建立をみました。江戸の芝増上寺の末寺です。
昭和49年5月、寺の境内一帯は、江戸時代後期に歴史的な役割を果たした寺院として重要で
あり、本堂は江戸時代の2度の有珠山噴火からも難を逃れてほぼ原型をとどめ、江戸時代の
たたずまいを今日に伝えると言う理由で、国の史跡に指定されました。面積は約5万?です。*
先日8月末に、ここの玉あじさいが美しいということを聞いて訪れた。
平日の午後で、他にお客様もいない静かな時だった。かやぶき屋根の本堂やそれに続く客殿の
たたずまいを見ていると心が安らむ。本堂も客殿もかやぶきの屋根や木の質感が年代を感じさせると共にやすらぎを感じさせてくれる。
お寺の方にお聞きすると、
「あじさいは、客殿の中庭側にあるので、どうぞ上がって見ていってください。ちょうど今が見頃ですよ。」
とのことで、建物の中に上がらしていただいた。客殿の中庭にはつつじやあじさいなどたくさんの花木があり、その奥には裏山の森の木々が続き、緑一杯の空間が広がる。
中庭に面する廊下が素晴らしい。長さは10m以上あるだろう。見事にぴかぴかに磨かれていて、廊下の面に部屋側の障子や柱などが映り込むほどである。
その廊下に腰掛けて、庭のあじさいの花を楽しませていただく。ぼたんの花のように丸く球状の大きめの蕾が付いている。周辺に白い花を配して中心部は淡い青紫の小花が集っている。花と蕾の数がよいバランスでちょうど見頃という感じであった。
静かである。裏山の遠くにセミの鳴き声があるが、やかましい感じではない。小鳥が木々の間を飛びまわり、チュクチュクという声が聞こえる。白い蝶が花の間をゆっくり飛んでいる。
中庭には陽が射して明るい。いろいろな木々の緑が陰影を作っている。
廊下に座り、小鳥や蝶の飛ぶ姿を目で追う。その姿を見ているだけでものどかである。
4月の後半、有珠山の山開きがある。この日は有珠善光寺のご住職が登山口にいらして、一年の登山など山の安全祈願を行い、その後にみんなで記念登山を行う。遠い昔から有珠山、有珠善光寺はここに住む人々の信仰の対象であり、祈りの場であったのだろう。
有珠善光寺の庭や裏山には、所々に巨岩が配されている。遠い昔に有珠山の噴火の時に、飛んできたか転がってきたかでこの地に収まった。このような大きな岩を吹き飛ばすエネルギーたるや、自然の力はものすごい。この岩の割れ目に溜ったわずかな土に桜の苗が出て、やがて大きな桜の木となった。「石割り桜」として裏山の名所となっている。
春先には、かたくりやエゾエンゴサク、エンレイ草、きくざきいちげなどの花が春一番の花を咲かせる。1週間ずれると終わってしまうこれらの花を見るには、タイミングや天候を読まなければならない。
さくら、つつじ、ぎぼうし、ぼたん、あじさい、いちょうの黄葉などなど季節ごとに庭は草花に彩られる。
折々の季節に訪れて、静かさ、木々や花々、鳥の声などに癒やされる空間だと思う。
(09-9-8)