■清く澄ませ白河の水
今回の衆議院選挙が民主党の圧勝に終わった話題で持ちきりである。
何とかこの世の中を変えて欲しいという庶民の声の表れである。
童門冬二さんの「松浦静山 夜話語り」を読んでいて、こんな一節に出会った。
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時は、松平定信の寛政の改革の頃である。
田沼意次のワイロ政治に辟易として、世直しを望む
庶民の声が高まった。
定信は、白河松平家をついだ英君で、世の中の期待の
中で老中首座(今でいう首相)について、「寛政の改革」を推し進めた。
その時の期待感が狂歌になって、
「田や沼や 汚れた御世を改めて 清く澄ませ白河の水」
と庶民は歌った。
定信は福祉を中心とする愛民の政策を打つが、幕府財政は一向に好転せず不況が続いた。
そうすると、クリーンな政治を期待した一般庶民も今度は、
「白河の清き流れに魚住まず 濁る田沼の水ぞ恋しき」と勝手なことを言い出した。
どんなにクリーンな政治が行われても、景気が好転しなければやっぱり面白くない。
童門さんは云う「世論というのはこうしたものだ。が、一面健全でもある。」
うーん、これは歴史の中の教訓だなあ!
政治は、理想を目指す中の現実とのバランス取りだから、これからの民主党の改革を見守って行きたい。
松浦静山(まつら せいざん)は、江戸中期の肥前平戸藩主だった人で「甲子夜話(かっしやわ)」という著作が有名である。
平戸(長崎県)というところは日本の西の端で海に面している。静山の先祖は海賊ではないかともからかわれているが、先祖にはポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスなどから来た使者との交わりがあった。そんな家系から海外への関心や国防問題への関心が高い人だった。
この松浦静山に若き日の勝海舟(麟太郎)が学んでいる。老後を江戸の本所で過ごす静山を訪ねて、国防や海外事情、政務に関すること、歴史などを静山から学んだ。勝海舟はやがて佐久間
象山の門をたたきここでさらに国防などのことを学び、幕政に参画していくことになる。
幕末には、勝海舟は組織の壁を越えて西郷隆盛と坂本竜馬を結ぶ役割を果たしたり、坂本竜馬に自分の知見を叩き込み鍛えた。
このことを思うと、師とは、学ぶということは、連綿とした人のつながりであると感じる。
(09-9-8)