■アラーム・コール(2月7日)
いよいよトラである。
宿泊先のホテルはTiger Den という名前で、その意味は『トラの棲みか』である。
午前6時少し過ぎに迎えのジープに乗ってホテルを出る。
外は寒い。気温は4~5度くらいか?予想外の寒さである。
このバンダウガル国立公園は広さが伊達市と壮瞥町を合わせたくらいの大きさで、草原、森林、そして山がある。
6時30分の開門と同時に、まだ暗い中をジプシーはライトも点けずに走って行く。
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門を入るとすぐに猿の群れが見える。続いて鹿が見える。
トラは夜から早朝にかけて獲物を獲るらしいので、朝と夕方がトラを見るチャンスが多い。
時々、シカや猿が発するアラームコール(警戒の声)が聞こえる。アラームコールとトラの足跡を頼りにガイドはアチコチと探し廻るが、トラは見付からない。
私も野生のトラがそう簡単に見つかるとは思っていない。
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午前中はトラを見付けられずに終る。
ホテルに戻り、午後2時30分からまたジープに乗る。
いくら探しても、シカやイノシシや猿しか出会わない。
少し焦る。
O君は『トラの観察は、1に辛抱、2に辛抱である』と言う。
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少し暗くなり出し、午後5時30分の閉門の時間が近付いて来た。
数台のジープの停まっている場所で、我々も何かを待っていた。すると、15メートルくらい先の草むらが僅かに動いた。
そして、次にトラが姿を現した。
それは美しい姿だ。
生まれて初めて野生のトラを見た。
それは感動する瞬間だった。
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(おまけの話)
ジープにはインド人のドライバーとガイドが乗っている。
彼らの視力、聴力は驚くべきものがある。
我々の見えない物、聞こえない物を的確に捉える。
視力などは、5.0くらいはあるのではないかと思える。
なかなかトラが見付からない中で、ジープの同乗者のY君が『トラだ!』と言った。ドライバーはその声で、車をバックさせた。Y君の指さす方向には、遠くにシカが見えた。
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車をバックさせたドライバーには申し訳なかったが、老眼鏡を掛けているY君の言うことなんか聞く必要は無いのだが、そこは客商売であるから気の毒だった。
その日以来、Y君は静かになったのである。