■メロンの洪水
メロンの話である。 子供の頃はメロンは無かった。
マクワ瓜がメロンだったのかもしれない。
その後、品種改良されたプリンス・メロンという物が出て来た。そして、メロンの極め付けはマスク・メロンである。
マスク・メロンという果物は高価なものだったので、たまに食べる機会があっても16分の1というような小ささで、それをありがたく頂いていた。
だから、若い頃はあまりシッカリとマスク・メロンを食べた覚えがない。
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伊達に来るようになって、この辺りがメロンの産地だと知った。そんなことから、色々な方からメロンを頂く機会が多い。
私は赤肉のメロンの方が青肉のメロンより好きである。
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今から考えると、私がアメリカに住んでいた時に食べていたキャントロップという種類のメロンが、この辺りで生産されている赤肉メロンだったのかもしれない。
今がメロンの収穫時期なのか、最初にメロンを頂くと、それをキッカケに次々とメロンがやって来る。
イコロ農園の昼食の後にもメロンが出て来る。
まるでメロンの洪水である。
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洪水も本当の洪水でなく、このような洪水は大歓迎である。次はサンマか鮭の洪水が来そうだ。
(おまけの話)
結婚してしばらくしてから知り合いの人が入院をしたので、女房と一緒に病院へお見舞いに行った。
その時にお見舞い品として、当時は高価であったマスク・メロンを持って行くことにした。
吉祥寺の通りにある小さな店に入り、そこにいたオヤジに、『メロンを見繕ってくれ』と頼んだ。
オヤジはメロンのT型のヘタを持って、裏を覗きこんだ。
その時に、なんとヘタが取れてしまった。
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メロンはT型のあのヘタが無ければ、全く値打ちが無い。
味にはなにも関係無いのに、昔からそうなっている。
そこで私はオヤジに、『安くしてくれれば、それを買ってもいいよ』と言った。
お見舞い品とは別に、私はそれを半値で買って帰り、家で女房と半分ずつにして、初めてメロンを思いっ切り食べた。
そして、食べた後には喉がえがらっぽくなってしまった。
これが私達がメロンを嫌いになったキッカケである。
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それ以来、メロンとは遠ざかっていたが、伊達に来てから美味しい有珠メロンを頂くようになり、40年振りにメロンを食べるようになったのである。