■船は出て行く
私の家から晴海港までは歩いて10分ほどである。 その途中に東京オリンピックの際に、選手村となる予定のマンション群が建設中である。この港には客船が入港する。
正式名は「東京港晴海乗客ターミナル」である。
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海外から来る大型クルーズ船が、ここに時々、入港する。
ただ港の入り口にレインボーブリッジがあるために、そこを通過できない大型客船は横浜港に行ってしまうのが残念である。
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レインボーブリッジは1993年に竣工したが、その頃の豪華客船「クイーン・エリザベス2号」が通過できるように橋桁の高さは52メートルで作られたが、クイーン・エリザベス号がこの橋の下を通ることは一度も無かった。
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最近のクルーズ人気で客船はドンドン大型化していて、晴海港に入れる客船は少なくなっている。東京オリンピックの選手村が目の前なのだから、クルーズ船が多くやって来て欲しい。
ネット情報で晴海港の「入出航情報」を見ることが出来る。
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その情報で10月21日の午後4時に、イタリア船籍の「COSTA NEOROMANTICA号」が出航をすることが分かった。
そこでカメラを持って、ブラブラと歩いて行った。
かなり早目の午後3時20分にターミナル1階に着くと、ブラスバンドが見送りの演奏をしている。
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私は何回かここへきているので、船が出ると分かった。
焦った。「そんなのあり?」という思いだ。
慌ててエレベーターで3階に上がり、見送りデッキに出る。
船はタグボートに引かれながら岸壁を離れることころだった。
乗客がデッキに出て、手を振っている。
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電車の出発時間の正確な日本でのことなので、定刻より早く出航することに驚いたが、これもイタリアの船だからだろうか?
そして突然、昔の演歌歌手の「畠山みどり」が歌った「船は出て行く 煙は残る 残る煙がしゃくのたね」という歌詞が頭に浮かんだ。
「昔は石炭で船が走っていたんだなー」と変なことを考えながら「コスタ ネオロマンチカ」を見送ったのである。
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(おまけの話)
私達が夏の間、伊達市に滞在の為に行く時は大洗港からカーフェリーに乗り、苫小牧港で降りた。
船は商船三井の「さんふらわー号」で、総トン数は13,816トン,乗客は590名だった。大洗港を夜8時頃に出航すると、苫小牧港に翌日の午後1時30分頃に到着した。
料金は特別室で2人で3万5000円だった。
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特別室といっても特に特別なことは無く、格安のビジネスホテルのツインの部屋と同じ程度で狭かった。船の食事は別料金で、しかも不味いので、いつも家からお弁当を持参した。
船の中も特別に見るところもないが、退屈まぎれにウロウロした。
深夜にデッキに出て、真っ暗な海を眺めるのも好きだった。
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「このまま海に飛び込めば、誰にも知られずに死ぬんだなー」なんてことも想像した。早朝にもデッキに出て、日の出を見るのも好きだった。
でも不味い朝食を食べた後の、到着するまでの時間を持て余した。
帰る時も同じコースで、これを9年間も続けてもう船旅は飽きたのである。
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