■最後の言葉は『ありがとう』
3ヶ月毎に杏林大学医学部付属病院に定期検診に行っている。 『手術後1年が経過したら、6ヶ月に1回の検診になる』と、担当医が言っていたのに、そうはならなかった。
PSA値が僅かだが上昇しているからだと思う。
前立腺癌の手術をしてから、もう2年近くが過ぎた。
5年生存率というのがあって、手術後5年間を生き延びれば、その先は大丈夫ということらしい。
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66歳で手術をしたから、5年が経過すると71歳となる。
あと3年強であるが、最近になって『5年生存しなくてもいい』と考えるようになった。
「元気なら長生きしたい」という人もいるが、あまり長生きして女房も友人もいなくなり、子供にも先立たれたら悲劇である。
また、元気だがボケていたら困るし、私の友人のように『元気だが、足だけが悪くて車椅子に乗っている』という人もいる。彼は元気で口ばかり達者で、奥さんが陰で泣いている。
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『また、橋本さんの弱気が始まった』と伊達の長老のKさんに言われそうだが、誰でもいつかは終りがやって来ることは間違いない。その時にあたふたしないで済むように、心構えだけは必要だ。
出来ることなら、最後に長年連れ添った女房と、お世話になった人達に、『ありがとう』と言ってから旅立ちたいと願っている。
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私のオヤジは昔のことなので、癌の告知をしなかった為に、『ありがとう』とも言えずにあちらに逝ってしまった。
オフクロは朝になったら死んでいたので、彼女も『ありがとう』と言えなかった。
そんな2人の分も含めて、私が『ありがとう』と言ってから逝きたい。
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(おまけの話)
毎年6月になると小金井市役所から封書が届く。
中に入っているのは、いつも同じ「介護予防基本チェックリスト」というもので、調査の項目には、「私はそんな年なんだー」と感じるようなものばかりが並んでいる。
そして、質問に対してイエス、ノーで答えるのである。
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「年のせいか、つまずくことが多くて困る」
「もう年だから、硬いものを食べなくなった」
「最近、好きなことでもやる気が起きなくなった」
「銀行の用事は自分で出来ない」
・・・などというものが、20項目くらい続く。
イエスとノーだけの回答であるから、その中間は無い。
そうなると、全てがノーなのだが、少しだけイエスの部分もある。
今はまだ見栄を張って「介護は不要!」と力んでいるが、大甘に回答すれば、私にも介護が必要となってしまうのである。