■後悔しながら阿修羅を彫る
北海道へ出発する前日の6月19日に仏像教室に行った。 その先は伊達に行くので、しばらくは教室をお休みすることになる。
幸いに日光菩薩像を彫り上げていたので、次の課題も無く、安心して伊達に来られた。
伊達でも時間を見付けて仏像を彫ろうと思い、道具だけは持参した。ところが、農作業やお付き合いに忙しく、全く出来なかった。
帰る時に車に荷物を積んでいたら、道具が出て来て驚いたほどだ。

9月4日に伊達から戻り、初めての仏像教室に行った。
事前にメールで恐る恐る、『次の私の作品に阿修羅像はまだ早いですかー?』と先生に聞いてみた。
心優しい先生はすぐに返信をくれて、『帰って次の日に、もう仏像のことを考えられるとは、一人前の仏師です。従って、阿修羅OKします』とあった。

伊達で農作業ばかりやっていると、自分もそうだが、周りの人も私が仏師であることを忘れている。
私は阿修羅像を彫るほどの仏師なのだから、伊達の皆さんも私を農民扱いしないで、もっと尊敬して欲しいなー。
この阿修羅像が完成するのは、早くても2ヶ月ほど先になるだろうと思う。
でも、今回は実力以上のとんでもなく難しい題材を選んでしまったことに今では後悔している私である。

(おまけの話)
東京に帰る前に伊達市役所に行った。
いつものように、伊達に遊びに来た友人達を『心の伊達市民』に勧誘し、喜んで入会してもらったので、その申込用紙を届ける為である。
『住んでみたいまちづくり課』の担当者は、『東京から、これが送られて来ました』と、写真集を見せられた。

それは、昨年の9月に伊達市の大雄寺で行った『仏像 in 伊達』の写真集であった。
1年近く経って、やっと出来あがったのである。
写真集には私の作品も出ている。
このような立派な本になると、私の作品も高価に見えるから不思議だ。

私の作品に値段を付けるとすれば、『売るには安過ぎる。買うには高過ぎる』ということになりそうだ。だから私は自分の作品を売らない。
でも、伊達市で私からプレゼントされた作品を持っている人は多い。
いずれ、『なんでも鑑定団』で、驚くような値段が付く。・・・・はずだ。