■ほったらかし温泉で日の出を
どこで何でかは忘れたが、『ほったらかし温泉』という妙な名前を見た。 秘湯研究会の会長の私としては放っておけないと思った。
インターネットで調べたら、それは甲府の近くにあるのが分かった。更に嬉しいことに、『露天風呂から見る日の出が最高だ』と書いてあった。
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そこで前日に天気予報を見て、大丈夫と確認して目覚ましをかけて寝る。
午前4時に車で家を出て、5時20分に目的地の『ほったらかし温泉』に到着した。入口の自動販売機で700円の入浴券を買う。
露天風呂に行って驚いた。
まだ真っ暗だというのに30人くらいのお客が来ている。
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しかも、その殆どが20歳代だと思われる若者であった。
オジサンは私を含めて3人しかいない。
こんな温泉は珍しいし、初めてだ。
彼らは果たして何者なのだろうか?ホストの仕事帰りか?風呂の後に仕事に行く会社員なのか? 裸姿を見ただけでは職業は分からない。
6時25分頃に日の出があると言うので、露天風呂に入って待つ。
薄明るくなって来たら、空には雲が覆っている。
天気予報では快晴の筈なのにー!
風呂から見ると右手に真っ白に雪を被った冨士山が見える。
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左手の山の上が赤くなって来て、朝焼けである。
それに連れて富士山の東斜面がピンクに色づく。
眼下の灯りは甲府盆地の中にある山梨市である。
素晴らしい景観である。700円では申し訳ない経験である。
これが快晴の日だったら、露天風呂に浸かって日の出を見るというこんな贅沢な時はないだろうと思う。
55分も風呂に入っていたので、風呂から出たらクラクラした。
しばらく風呂の上のタタキで休んだが、冷気が頬に当たり気持ち良い。ここは私のお勧めの温泉になりそうだ。
(おまけの話)
露天風呂から出て階段を登ると、そこには朝食をやっている店があった。
『味噌汁ご飯』が400円で、ノリと生玉子は各50円である。
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それを買って外のテーブルで食べていたら、風呂で一緒だった若者が声を掛けて来た。
『今日は日の出が見られませんでしたねー。赤富士を期待して来たんですけどねー』と言った。
それから話が弾み、『なぜ平日のこんな時間に若者が風呂に来ているのか?』と私が聞くと、彼は『殆どは大学生で、春休みなんですよ』と答えた。
それにしても、今どきの若者が暗い内から家を出て、温泉に来るとは驚いた。
更に就職難のことや内定取り消しの話に進み、思いがけない場所でこの不況を確認することとなった。
この時食べた生卵かけご飯は美味しかったなー。生卵かけご飯なんて何年も食べた覚えがない。
露天風呂と朝ご飯で1200円である。
1200円で1万円以上の幸せを感じた日だった。
家に戻ったらまだ午前9時で、なんだか久し振りに朝帰りしたような気分となった。
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(ほったらかし温泉源泉資料)
泉質・・・単純泉。湧出温度・・・41.4度。 加熱、循環式。