■緊急事態宣言の「ひきこもり」
武漢ウィルスの拡散を阻止するために、政府は4月7日に緊急事態宣言を発令した。そうなると、徘徊が日課の私は困った。 私の年齢でウィルスに感染したら、多分、アチラへ招かれてしまうだろう。だからなんとしてもウィルスを避けたいが、そうかといって「ひきこもり」も辛い。
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30日間も家に籠り切りだと、足腰が弱る。
3食も女房に面倒を掛けたくない。外国では外出禁止で罰金も課せられる国もあるようだ。
健康と家庭円満のためにも、なんとか外へ出たい。
窓から外を見たら、町はいつもと変らず人が歩いている。
この辺りの人達は「外出自粛」をどう思っているのか?
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前日に郵送で、2通の請求書が来ていた。
支払い期限はまだ先だが、外出自粛明けの1ヵ月先では遅過ぎる。
私にとってはこの支払いは「不要不急」であるが、受け取る側はそうではない。そこでどうせ払わなければならないならと思い、豊洲の郵便局へ振り込みに行った。
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天気も良く、歩いていると気持ちが良い。
郵便局で振り込みを終え、その先の豊洲水産ふ頭に海を見に行った。
途中の水産会社は通常通りの営業をしているようで、トラックの出入りが激しい。埠頭の先端に行ったら、目の前に東京湾、その先にレインボー・ブリッジが見えた。
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海風が頬に当り、気持ちが良い。ほのかな潮の香りも心地良い。
コロナウィルスのことなど、忘れてしまう。
この日が「緊急事態宣言」が出た日とは、とても思えない。
世間の常識から離脱してしまうと、こんなものなのかと感じて歩く。
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ゆりかもめが空を舞う。
小型船がこちらに向かって来る。
停泊中の東京海洋大学の練習船「海鷹丸」が目の前に迫る。
ここからバスで20分で銀座に行けるとは、とても思えない。
左手には東京オリンピックの選手村、その奥に晴海埠頭の乗客用ターミナルが見える。
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マスクを外して、思いっ切り新鮮な空気を吸う。
まだこの日は「ひきこもり」の1日目だったと気が付く。
これが30日も続いたら、私はどうなってしまうか心配になって来た。
私はたった30日間のひきこもりだが、本物の「ひきこもり」で何年も部屋から出ないというのは、本人にとっても実は大変な苦痛なのだと分かった。
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(おまけの話)
引き籠っているとやることが無いので、PCの前に座ることが増える。
すると「あの人はどうしているかな?」と気になり、メールを送ることになる。
そして2~3日の内に、嬉しい返信が来る。
向こうにとっては私ほど暇人じゃないので迷惑かもしれないが、無視しないところをみると大丈夫そうだ。
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冷凍庫に入るので、この時期でもダウンジャケットが必要である。
ベトナム人の知り合いの何人かにメールを出したら、返信が来た。
1人目は日本語学校の先生で、私のマンションに来たこともあるN子さんだ。
「お久しぶりですね。ご家族はお元気ですか?Corona は危ないですね。先生が年を取っていますのでご健康に気をつけてください。いつ Coronaが終わるか分かりませんからとても橋本顧問のご健康を心配しています。日本の状況は深刻しているますね」。
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次は神奈川県に実習生として来ているF子さんからである。
「私はいつも元気です。この間日本はコロナウィルスを増えていますから、橋本先生はよく気を付けてください。心配しますから。
私の会社は食品会社ですから、その間仕事も増えています。マスクはスーパーに買えないので会社からもらっています。橋本先生と家族は自分の健康を守って下さい」。
まだ色々と来ているが、みんな高齢者の私のことを心配してくれている。
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