■熊とマムシの出る秘湯
秘湯研究会の伊達支部の行事で、川又温泉行きを計画した。 参加者は4名で、平均年齢は70歳を越えている。
集合場所のカルチャーセンターの駐車場には、心配してHさんが熊よけの笛と鈴を持って見送りに来てくれた。
1人で行くと、熊に襲われたら100%の確率だが、4名で行くなら25%に確率が落ちるので、少しだけ安心する。
Rさんからのメールでは、最近はマムシも出るから注意という。
本気で心配してくれているのか、みんなで私を脅かすのである。
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登別から鉱山町まで行き、そこから山道に入り、車で行ける所まで進む。その先は徒歩で獣道を進むのだが、その前にHさんが熊よけの爆竹を鳴らす。
Kさんは熊が出たら戦うつもりか、杖代わりに竹刀を持って来た。
Fさんは、自分だけは早く逃げる為か、地下足袋である。
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先頭を行くHさんが時々、熊よけに笛を吹く。
それが警察の交通取締りのようなリズムなので、私が捕まったような気分になり、どうにも落ち着かない。
山道を下り川に出る。
目印のピンクのリボンを頼りに川の中を進む。
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また山道に入り、暫く進んでまた川に出る。
そして川沿いに進むと、硫黄の匂いがして来た。
もう温泉はすぐそこという雰囲気である。
上流に掘立小屋が見える。
あれが川又温泉の脱衣所のはずだ。
急流を避けて山道から進むと、目の前に湯船が見えた。
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やっと着いた川又温泉は、紛れもなく秘湯であった。
我々4人以外は誰も居ない。
静寂の中に、ただ川の流れる音がするだけである。
山奥の秘湯の温泉に浸かり、至福の時を過ごした。
(おまけの話)
この温泉は弱硫黄泉質で、湯船の底からお湯が沸いて来る。
また、湯船の横から湧水が入って来るので、温度が低い。
私の感覚では35~36度くらいではないかと思う。
ぬるいお湯なので、いつまでも入っていられる。
湯船の底には泥が溜まっているので、誰かが動くとお湯が濁る。底にはゴツゴツの石があって、足が痛い。
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湯船のアチコチから泡が出て来るが、これは炭酸らしい。
4人が並んで入ると一杯になるほどの広さの湯船である。
お湯が湯船から溢れ出ているが、かなりの湧出量のようだ。
1時間ほどお湯に浸かり、のんびりと過ごす。
帰りはまた川を渡り、山道を戻る。
秘湯というのは、折角いいお湯に浸かっても、帰る道中でビッショリと汗をかいてしまうのが問題なのである。