終活というべきかもしれない。
今回、手術を初めて受ける身になって、つくづく俺ももうそんなに長く生きないのだなと思った。
もちろん、人生の先輩たちには「60歳代なんてまだまだひよっこだ」なんて叱られるだろうが、この20年があっという間に過ぎたことを思うと、残りも同じようにあっという間に終わることになる。
そういうことを考え、突然死んでも残される人に迷惑をかけないように少しずつ身辺整理を始めている。
別に相続とかそんな話ではない。単なる持ち物整理である。
カミさんに言わせると「捨ててもいいもの」ばっかり持っている俺としては、生きているうちにちゃんと自分で見極め、売るなり捨てるなり処分しておきたい。俺が死んでからカミさんに整理をさせるわけにはいかない。
そういえば、親父が死んだときには、やたら広いマンションにあった沢山のものを弟と一緒に整理するのに大変苦労したが、ついに価値のあるものは見つからなかった。単にそういうものは持っていなかったのかもしれないが、俺が死んだあとに「くだらないものばかり持っていたな」なんて言われるのはいやだ。
そんなことで、捨てられるものはどんどん捨てようと思いながら、簡単にいかないものにハードディスクドライブがある。仕事の関係上、これまでたくさん使ってきたが、今では不用品だ。こいつらにはデータというものが書き込まれているから、そのまま燃やせないゴミに出すわけにはいかない。ソフト的に削除しても安心できないから、物理的に破壊するしかないのだが、これがやっかいで今まで手をつけられなくて溜まる一方だった。
そこで時間もあるので、ひとつずつ分解してやろうと考えた。

まずはネジをはずしていく。
特殊ネジやら隠れたネジがあって、多少手こずったが、慣れてくるとどれも同じような構造だとわかってきた。
外箱を開けてみると、実に美しいディスクが出てきた。CDやDVDとは違う、むしろ鏡のような光沢を持っている。そこに汚いオヤジの顔が映り込む。

強力な磁石たちをやっと取り除き、データを書き込むアーム部分をはずす。この部品の精密な作りには特に感心させられた。先端にまるでレコードの針のような書き込みヘッドと読み取りヘッドがある。


0と1に変換されたデータが、この先端から1秒間に100回転以上もするディスクに電磁的に記録されるらしい。物理的なレコードの溝と違って、磁気の模様を書き込み、それをまた電磁的に読みとる仕組みだ。
こんなに美しく機能的なものを考えたのはどんな人物なのだろうか。
しかし自分では絶対に作れないこの小さな精密機器も、不用品となっては捨てられる運命となってしまうのは痛ましい。人間も同じかもしれないなと思った。
俺は散々世話になってきたこの素晴らしい機器たちに、心から感謝をしながら、次々に分解し、ディスクはしっかりと折り曲げ、燃やせないゴミ袋に入れていった。
ありがとう!ハードディスクくんたち!


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