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なんぼですか?

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「なんぼですか?」

以前我々のすぐ近くに住んでいた70代前半のオバチャンとは、今も付き合いが続いている。このオバチャン、よくもまあこんなところにと思うくらいのボロボロの平屋にひとりで住んでいるのだが、近所だった頃は、時々ウチを訪ねて仕事を依頼しにきた。
それは冬の準備で窓枠にビニールを張ったり、薪ストーブの煙突掃除だったり、雨樋の修理だったり、ちょっと手のかかる作業であったが、このずんぐりむっくりのオバチャンは、作業をしてあげれば大変喜んでくれたので、近所づきあいだと思ってお礼も受け取らずに無理のない範囲で対応した。

4年ほど前、我々は以前住んでいたところから少し離れたところに引っ越したわけだが、引っ越してからもオバチャンはわざわざウチまで来て頼ってきた。しょうがないから冬の前には煙突掃除などをしてあげている。火事になって焼死されても困るからだ。

そんなオバチャンが久しぶりに頼み事にきた。テレビが壊れてしまい、代わりのテレビにつなげてくれないかという話だった。
まあそれなら簡単に終わりそうかなと思い、すぐに家に行って作業をしたが、どうも代わりのテレビがよく映らない。14インチくらいの小さなテレビなのだが、電波の調子が悪く、NHKしかまともに映らないのだ。もしアンテナやケーブルの問題であるなら、俺の手に負えないなあと思い、オバチャンに
「電気屋にはお願いしたのかい?」と聞くと、
「お願いしたけど忙しくて来れないと言われたのさー」という。

それならしょうがない。とはいえ、テレビも観られない生活を続けるのは辛かろうと思い、
「もしかしたらテレビのせいかもしれないから、代わりのテレビを探してみる。見つかったら取り付けしてあげるよ。」と言ってオバチャンの家を後にした。

家に戻ってすぐに、商工会仲間の親しくしている電気屋に、リサイクルのテレビをもらえないかなと思って電話をした。するとこのオバチャンの話となった。案の定、この話は彼のところにきていたのだ。
「オバチャン、忙しいと断られたと言っていたけど……」
「いやあ、あのオバチャン、実はいろいろあってねぇ……」と電気屋は言葉を濁した。
どうやら以前から支払いの問題があるようだった。

電話を切ったあと、商売にならなきゃ仕方ないなと思っていたところ、またオバチャンが訪ねてきた。
「テレビ、近くの人が捨てようと思っていたのをもらったさ。」と伝えにきたので、すぐにまたオバチャンの家に向かった。

旧式だったが、今度は随分と大きい画面のテレビだった。それをアンテナにつなげるとなんなく綺麗に映った。オバチャンは大喜びだった。なにしろそれまでの4倍も大きい画面なのだから。

早々に引き揚げようとして、家の外に出るとオバチャンが不安そうに聞いてきた。
「なんぼですか?」
「別にいいよ、ケーブルつないだだけだし……」と断った。
すると「どうもありがとうございます。」といつものようにうれしそうにお辞儀をしてきたが、俺はそそくさと車に乗ってオバチャンの家を後にした。なぜかあまり長居はしたくなかった。

このオバチャンは俺によく「自分は生活保護を受けているから……」と言っていた。多分周りの人にも隠さずに言っているのだろうと思う。
そういう人たちは社会的弱者といえようが、この町には少なからずいるようだ。
歳をとって体力がない。お金も日々なんとか生きていくのにやっとしかない。そうなると何かあったときに相談するとしたら役場しかないだろう。冬の雪かきなどのライフラインに関しては、役場がボランティア等を集めてやっているケースもある。だが役場だってやれることには限界がある。

「テレビのケーブルくらい自分でつなげよ」とか、「煙突の掃除くらい自分でできるだろう」とか、そう言うのは簡単だ。だが「どこにつないだらいいのかわからない」「ハシゴには怖くて登れない」という理由は本当なのだろうとは思う。

インターネットだって使えない。車もないから買い物だって簡単にいけない。何か困り事があれば人に頼るしかない。それもわかる。それでも、どこまでが甘えなのかと考えてしまう。

これから人口が減り、高齢化が進む我々のような小さなコミュニティでは、お互いに助け合わなければやっていけなくなるのは目に見えている。
ではどこまで手を貸すか。そのさじ加減が、俺にはまだわからない。あの日そそくさと車に乗り込んだのも、たぶんそのせいだ。

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犬と暮らしとカヤックと

kayaker

豊浦町でワンコたちと暮らし、たまに海で遊ぶ日常をつづります。

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