■彼岸花
亡くなった人に対して、花を手向けるのは何故でしょうか?原始時代からすでに、遺体や墓の傍らに花を供えていたらしく、「日本書紀」にも、日本神話に登場する女神イザナミの死に際して、献花する様子が描写されている…。死者へのせめてもの供養、慰みの意味が大きかったのではないでしょうかね…?
ただ一方で、花によって結界を張り死霊がこの世に迷い出て来ないように封じ込めるという意味もあったのではないか?縄文、弥生時代の頃から、墓の四隅に花をあしらった「忌串」という串を刺す風習があったとされる。この四方の串によって死霊を墓に閉じ込めたという…。現世への未練を断つアイテムなんでしょう。死者に花を手向けるという行為と、花によって霊を封印する儀式…双方が絡み合って、葬儀に花は欠かせないものになっていったんでしょうね…。

釈迦が入滅(死)した時に、周囲にあった4本の沙羅双樹の木が悲しみのあまり白く変色した事に由来し、遺族の悲嘆を表す装具、と説明される事が多いですが、これは後付けで…元々は釈迦以前の太古、死霊を畏れた人々が本能的にはじめた習俗ですよね…。
葬儀の花といえばもう一つ!彼岸花も忘れてはならない…。名前の通り、春と秋の彼岸の時だけ咲くという妖しい紅色の花ですよね…。1年のうちでたった2度、昼と夜との時間が同じになる彼岸の際には、あの世とこの世が結び付く…。先祖もあの世から帰って来る…。だから人々は墓参りをする訳で…。そんな彼岸を彩る真っ赤な彼岸花は、死人花、地獄花、幽霊花等、不吉な異名も持っている…。死者の霊とともに開花するだけでなく、墓地のそばで咲き誇っている事が多いからで…。

こうした忌み花である事から、墓地に咲くものだけど、仏前に彼岸花を供える事はタブーである。また火炎を思わせるその造形から、家に持ち帰ると火事になるとも伝えられている…。