■八百万の神々から武士へ…
豊かな自然に恵まれた国、我が国日本。たださ、人々に恵みをもたらす自然は穏やかなだけではないですよね…。台風、干ばつ、地震、火山の噴火、津波等々…。自然が一度荒れ狂ってしまえば何も出来ないまま、多大な被害を人々にもたらす。全ての事象に神が宿っていると信じていた古代の日本人は、それを八百万の神々としていた。神々には穏やか面(和御魂=にぎみだま)と恐ろしい面(荒御魂=あらみだま)があると考えた。そしていかに荒御魂を持った神を鎮め和御魂へと導くかが神を祀る上で重要だった…。
仏教を保護したのも、同様の考えからであったと思われる。大陸より伝わって来た仏教の新しい教えを信じれば、それまでの神道よりも悪霊を振り払う効果が高い!と考えられたのだろう…。東大寺に大仏殿が建立されたのも、鎮護国家、要するに災害を打ち払い、国の安定を祈願するためである。そして、旧来の仏教の効力が弱まったと考えられるようになると、唐に派遣した留学僧により、新たな仏教の宗派である密教系の天台宗や真言宗がもたらされた…。

しかし神道的な考えも色濃く残っていたのも事実で、怨みや憎しみを持った人の生霊や非業の死を遂げた人の死霊が、人々に様々な災いを振り撒く…。生霊や死霊は怨霊と呼ばれ、人々はその祟りを畏れた。疫病の発生や突発的な死は、怨霊によるものとされた。そのため怨霊を祀り、時には神さまとして、仇をなす霊を鎮めた。政争に敗れて大宰府に流され、失意の中で死んだ菅原道真公は、最も有名な怨霊ですよね…。

また怨霊と同じく人々を恐怖におののかせる物の怪もいた。異界から現われた鬼、国津神の血を引く人面蛇身の女性、人並みの知性と怪力を持つ大猿・猩猩、数種の獣の特徴を併せ持つ鵺等、人知を超えた物の怪たちに人々は恐怖した…。そして、その物の怪退治の多くを務めたのも、武士たちであった…。その武士たちがやがて、朝廷に代わり日本を治めて行くようになったんだけど…。