■音楽の素晴らしさ
大平まゆみさんの講演は、エルガーの「愛のあいさつ」のヴァイオリン演奏から始まった。「威風堂々」などを作曲したイギリスの作曲家エルガーが、奥さんになる人のために書いた小品で、なんとも優しい調べである。
大平まゆみさんは、有名なヴァイオリニストであり、1998年から札幌交響楽団のコンサートマスターを務められている方である。
今回、伊達市民カレッジの第一回プログラムに演奏をはさんだ講演をしてくださった。
(2011年6月19日 伊達カルチャーセンター)
飾らない温かい感じの話し方と、ヴァイオリンの澄んだ音色が、わたしたちに楽しく、心豊な時間をもたらしてくれた。
文明の発達は、わたしたち人間の五感―見る、聞く、匂いをかぐ、味わう、触れるーを衰えさせている。天候の判断は、テレビの天気予報やYAHOOの天気予報に任せて、自らが観天望気で“雲の様子や空気の気配を読む”ことがなくなってきた。
大平さんの祖母は、田舎の山の中に住んでいて、自然の気配、風向や雲の動きに敏感で、空気の匂いを読んでいた。昔の人は、多かれ少なかれこの能力を持っていた。
音楽を演奏するという行為には、この五感を研ぎ澄ませて行くことが大きく関係している。
人間の持つ潜在能力は大きなものがあり、楽器演奏もこの能力と無縁ではない。
大平さんの演奏するヴァイオリンは、300年前にイタリアのミラノで製作されたものである。
300年前といえば、日本の江戸時代で徳川吉宗や新井白石が活躍した時代に当たる。その頃に作られた楽器が、いまも現役として素晴らしい音色をわたしたちに聞かせてくれる。
ヴァイオリンという楽器は、弦をこすって起こる振動を上下2枚の板で構成される空間で共鳴させて空気の振動として外部に澄んだ音を伝えている。この2枚の板は、上下で材質が異なるそうである。メイプル(かえで)とスプルース(松)が使われている。表面に塗られるニスに音質を決める秘密があるそうだ。この木材は古来、新月の晩に切り出されるといわれている。不思議なことに、日本でも家具用の木材か(!?)、同じように新月の晩に切り出す木材があるそうだ。水分量が少ないとかの因果関係があるのだろうか?
ヴァイオリンの弦は、動物の腸を撚ったものが使われてきた。近年温湿度への安定性がよいということで金属製のものが多用されるようになった。大平さんは、腸性の音色が好きなので一本はこれを使っている。
引く弓の素材は、ペルナンブコというブラジル産の木で、いま使っている弓は、220~230年前のものだそうだ。弓に張られるつるは、馬の尻尾の毛だそうだ。

☆バッハのガボット。
☆モーツァルトのアイネクライムナハトムジーク。
特にモーツァルトがみんなに愛されるのは、ビートが安定しており、メロディーがきれいだからでしょう。エネルギーをもらえる。
鹿追町の牛舎では、牛にモーツァルトを聞かせて、乳の出がよくなった。
士別の羊、フランスのワイン、恵庭のいちごとモーツァルトを聞く動植物は多い!
大平さんには二人の大学生の娘さんがいて、お姉さんがお腹にいる頃は、モーツァルトの演奏する機会が多く、妹さんのときは東京の楽団に所属して、割と現代音楽を演奏することが多かったそうだ。そのせいかどうか、二人の性格はかなり違うなあ、とのこと。
やはりモーツァルトがいいかも、とおっしゃっていました!
☆モーツァルトのメヌエット 優しい調べだ。
今回の東日本大震災で大平さんのお母さんや妹さん家族も被害を受けて、一時安否が分からず心配な時を過ごした。何日かして、避難所に避難されていることが確認できて、ほっとした。いつも「音楽は素晴らしい。音楽は力になる。」と信じてきた自分だが、このときの1ヶ月くらいはかなり気持ちが落ち込んだ。神戸の震災の時も、何年か慰問に訪れて音楽の演奏が人々を元気にするという体験を持った。今回は打ちのめされたような気持ちとなったが、先日、新潟県の越後湯沢で慰問の演奏会を行った。ここのホテルの方が、新潟地震の際にお世話になったお礼にと、福島原発事故で避難を余儀なくされた方々をこのホテルによんでお世話をしているとのこと。ここで演奏して、人々が喜ぶ姿を見て、やはり音楽は素晴らしいという気持ちを新たにしたということだった。
思い出と音楽はつながる。音楽の調べを聴いていると、誰かを思い出す。
☆ドボルザークのユモレスク を演奏
ドボルザークは無類の鉄道マニア、昔なのでSLのファン。このユモレスクという曲も、一説には汽車が出発する時の“シュッー シュッー シュッー”という音を擬したとの話もあるそうだ。
高校で演奏会を行い、唱歌を演奏すると、いっしょに歌うのは、父兄と教師だけだった。
変だなあと思っていたら、いまの高校生たちは、文部省唱歌「春の小川」を知らない。もう教えてもらっていないようだ。
大平さんは、大の文部省唱歌好きだそうだ。今回も四季の懐かしい歌を、演壇から降りてわれわれ客席の通路を歩みながら演奏してくださった。みんながそのヴァイオリンの演奏に合わせて歌う。
☆「ふるさと」、「春の小川」、「花」、「夏は来ぬ」、「夏の思い出」、「赤とんぼ」、「もみじ」、「たき火」、「雪やこんこん」、「母さんの歌」など。
「皆さん、お上手です。びっくりしました!」
わたしたちも有名な演奏家の伴奏で、唱歌を歌える幸せ。贅沢な時間でした。
会場からのリクエストにも応えてくれた。
☆ソルベーグの歌
☆モーツァルトの五月の歌(これ、わたしのリクエスト)
☆ベートーベンのロマンス
☆サラサーテのチゴイネルワイゼン
どれも素晴らしいが、特に最後に演奏したチゴイネルワイゼンは熱演!
「汗をかいてしまいましたわ!」
会場からも、大きな拍手!!あれだけ長い旋律が、大平さんの頭にしまい込まれていて、それが手指の動きとなり、優しい、たくましい音色となって出てきた!
北海道に住んで13年になるそうだ。豊かな自然、伸び伸び感、スケールの大きさなどは
きっと大平さんの音楽活動にも何らかの影響を与えているだろう。
「冬の吹雪のときなんかも、外を歩くの好きです」ともおっしゃっていた。
☆モンティのチャルダッシュ
ハンガリーの民族舞曲で「酒場風」を意味するとのこと。
かって、スケートの浅田真央ちゃんが、フリーの曲としてこれを採用して、高得点をマークしたことがあった。
この曲を最後に演奏してくださって、きょうの講演が終わりました。
最後に、
「みなさん、一番素敵な音楽はみなさんの声ですよ!これからも唱歌を歌ってくださいね!」
(2011-6-21記)