福岡県での出来事だったと記憶しているが、梨が5000個ほど盗まれるという事件があった。木になっている梨を一晩でごっそり収穫されたというから驚くが、この農家は昨年も同様の被害に遭っているという。
にわかには信じがたい話だが、盗まれたとみられる梨は、実はメルカリなどの通販サイトでも大量に売られているらしい。大量出品している売主は生産農家などの情報を頑なに明かさず、質問にも答えないため疑いを持たれており、ベトナム人の売主だとも言われている。
こうした「安さの裏に出所不明の農産物が混じる」話を聞くと、少し前に自分が体験したある出来事を思い出す。
先日、帯広の先輩の見舞いに行った帰り、夕張に立ち寄り、お土産に夕張メロンを買おうと直売所に寄った。イートインができたので、1/6サイズほどのメロンをご馳走になった。一切れ900円という値段には驚いたが、味はそれ以上だった。夕張メロン特有の芳醇な香りととろけるような赤肉の甘さに、「メロンってこんなに美味しいのか」と衝撃を受けたほどだ。食べたのは「特秀」に次ぐ「秀」というグレードで、糖度12%以上のもの。これより甘いメロンがあると聞くとさらに驚くが、いずれにせよ高級メロンの名に恥じない味だった。

それからしばらくして、カミさんが注文した荷物が届いたので開けてみると、なんと夕張メロンが5玉。メルカリで買ったのだという。「え、本物なのか」と一瞬不安がよぎったが、割って食べてみるとこれが「うまい!」。1/4に切ったものを、あっという間に2切れ平らげてしまった。直売所で味わったほどの感動には及ばなかったものの、十分に芳醇な香りと甘みを楽しめる味だった。
気になって値段を聞くと、1.1kg×7玉の「良品」(直売所で食べたものより一段階下のグレード)で6,100円。1個あたりに換算すると、なんと直売所で食べた1/6切れとほぼ同じ値段になる。
一瞬「本物ではないのでは」と疑ってしまったが、ちゃんと夕張メロンの正規の箱に入っていたので、おそらく本物なのだろう。とはいえ、この安さには複雑な気持ちが残る。もちろん、直売所のイートイン価格は観光地価格であり、通販の卸価格とは前提が違うから単純比較はできない。それでも、盗難農産物が出所を隠して売られる事例が実際にある以上、「安ければ安いほど怪しんでしまう」という感覚が拭えないのも事実だ。
先に触れた、二年連続で被害に遭った梨農家は、今年も200万円ほどの損害を被ったという。丹精込めて作った作物が一晩でパアになってしまうのだから、やる気を失ってしまうのも無理はない。実に不憫でならない。
消費者からすれば、出所がはっきりしないながらも良品を安く買えるなら、こうした通販サイトはありがたい存在だ。しかしその裏側では、盗品すら簡単に売買できてしまうプラットフォームにもなっている。便利さと危うさが表裏一体であることに、あらためて複雑な気分にさせられる。
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