MENU

故人たちのいたずら

40

厳格だった父の命日は、ちょうど父の日のあたりにある。おかげで、墓参りに行く以外にも、毎年必ず一度は父のことを思い出す機会がある。
今年は子どもたちから鰻をプレゼントされた。添えられた「ありがとう」のメッセージを見て、ふと考えた。自分は父に、面と向かって「ありがとう」と言ったことがあっただろうかと。
今さら、亡くなった父を前にそれを言うことはできない。それでも今回はなんとなく、命日に父が枕元に出てくるような気がしていた。出てきたら、いったいどんな顔で対面すればいいのだろうと、少し想像までしていた。(過去記事:ありがとうは言わない

しかし結局、父は現れなかった。「そもそも霊感のまったくない俺のところに来るわけがないよな」と、少し期待していた自分に呆れた。

ところが……である。

命日の翌日、思いがけないことが起きた。我々が扱っている通販商品が、突然バズったのである。Amazonの倉庫にあった在庫は、わずか1時間で完売。楽天やYahoo!ショッピングも同様にオーダーストップとなった。調べると、テレビで芸能人がその商品を愛用していると話したことがきっかけだったらしい。
以前にもSNSインフルエンサーの紹介で売れたことはあったが、今回はそれとは比べものにならない規模だった。経験したことのない波で、その余波は今も続いている。

俺には、この出来事がどうしても父からのメッセージのように思えてならない。
父はどうしても俺に「ありがとうございます」と言わせたかったのではないか。だが、こういうアイデアは弟が思いつきそうなことだ。なるほど……。きっと、先に逝った弟と一緒に俺を見ていて、弟のアイデアを借りて二人でイタズラをしかけたに違いない。
そう思って、俺は天に向かってつぶやいた。
「親父、どうもありがとうな……」
そうつぶやきながら、なぜだかとても寂しくなった。

\ この記事をシェアする /

犬と暮らしとカヤックと

kayaker

豊浦町でワンコたちと暮らし、たまに海で遊ぶ日常をつづります。

アクセス総数
48,021回

コメントはまだありません。

コメントを書く


kayakerTOPページに戻る