テニスを20年ぶりに再開したのは豊浦に移住してからのことだ。
ラケットを握り直した当初は、頭の中にある学生時代の動きのイメージと、いまの自分の体とのギャップに愕然とした。週に1回、仲間との4時間のテニス。あれ以来たまにするゴルフくらいにしか使わずに錆びていた体は、まるで他人の体のように言うことを聞かなかった。それも10年ほど続けるうちに、やっと「これが現実だ」と受け入れられるようになってきたのが、ここ数年のことである。

テニス仲間は50代から70代。みんな必死で、その姿が時に痛ましく見える。人の様子というのは、よく見えるものだ。俺も彼らにそう見られているんだろう。こうしてシニアの我々が、お互いにテニスができるのは、あと何年あるだろうか。
そんなことを考えていた2月、クラウドファンディングで面白いものを見つけた。日本向けに開発中のテニス球出し器だ。ただの機械ではない。腕のバンドから操作でき、AIがカメラ越しにこちらの動きを判断して球を出すゲームモードまである。YouTubeで試打しているコーチたちの評価はみな高かった。
「これがあれば、いつでも好きなだけボールが打てる。もしかして今からでも上手くなれるかも?」
頭の中はプロのように球を打っている自分のイメージでいっぱいになった。
だが、価格は20万円以上。随分と高い「おもちゃ」ではある。それでも、クラウドファンディングの早割を前にして、気づいたときにはポチっていた。エイヤ!である。
さて、カミさんにどう報告するか。正直なところ、買う前に説得する自信がなかった。開き直ってさらっと伝えると、少し呆れてはいたが、意外にもあっさりと容認された。一緒にテニスをやっているのだから、文句もないということだろう。そういえばシーカヤックのときも「二人でやるから」という名目で買えたのだ。
しばらくして、4月までにクラウドファンディングの調達額は1億8千万円に達したとの連絡があった。みんなすごい期待をしているわけだ。
そして待ちわびていた先日の日曜日、外出から帰ると玄関先に大きな段ボールが届いていた。
「あ……遂に来たか!」
まるで待ちかねていたおもちゃを手にするガキのように、俺は箱を確認した。
それは確かに期待していたマシンであった。
さてさて、お楽しみはこれからだ!

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