昔は、結婚とは恋愛が発展してその流れでするものだと思っていた。いわゆる恋愛結婚だ。周りにお見合いで結ばれた夫婦もたまにいたが、最初から結婚を前提とするそのスタイルは、どうも俺にはしっくりこなかった。
最近はスマホアプリで結婚相手を探すことが普通になっているらしい。つい十年ほど前まで、出会い系サイトといえば怪しくて危ないものの代名詞だったが、そんなイメージも今は昔だ。考えてみれば、リアルなお見合いがネット上のバーチャルお見合いに変わっただけのことで、不思議でもなんでもない。それでも俺には、どこか違和感がぬぐえなかった。
ところが恋愛結婚をして三十五年が経った今、あらためて結婚というものを考えると、それは決して恋愛の姿をしていないとわかる。「好きだ」「愛している」という感情は、結婚において「無用」とまでは言わないが、少なくともメインではない。このことを若い頃に知っていたら、俺は結婚していなかったかもしれない。
何十年一緒に暮らしても、夫婦は他人同士だ。だから距離を縮めて愛情を深めようとする試みは、現実の結婚生活のなかでことごとく崩れていく。そしてその崩れ方が、かえって関係をおかしくする。
つまり、結婚においては「お互いに違う人間だ」という認識を手放さず、一定の距離感を保ち続けることこそが、関係をうまく保つ秘訣なのだと今さらながら思う。そうなると、結婚を恋愛の延長線上に置いてきたこと自体が、大きな勘違いだったのかもしれない。恋愛と結婚を別物と考え、現実の伴侶としてお互いをフラットに見極める「お見合い」こそが、結婚への正しいアプローチなのではないか――というのが、三十五年越しの結論だ。
しかしどうあれ、結局は「連れ添うも縁、争うも縁」である。

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