■借りた金は返すな
日本経済のバブルが弾けて暫く経った時に、「借りた金は返すな」という衝撃的なタイトルの本が出た。 私も借金はあったが、返せないほどの金額ではなかったので、その本は買わなかった。
伊達市に来るようになり、5~6年目くらいの時に、K社長から『伊達市を舞台にした小説「アルトリ岬」が発売されたので、買って読んでみて下さい』、と言われた。
そして、そのことはそれっきり忘れていた。
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ある日の朝に噴火湾文化研究所のO所長から電話があった。
『加治将一さんという作家が橋本さんの住んでいる上のコテージに家族で来ている。サクランボ狩りをしたいと言っているので、場所を教えてあげて欲しい』という話だった。
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車が無いと言う加治さんの為に、行きがかり上、私が案内することとなった。
夕方から壮瞥温泉病院の盆踊りに招かれているので、私の都合もあり、そちらにも同行した。
車中での話から、その加治さんという作家は『借りた金は返すな』と、『アリトリ岬』の作者であることが分かった。
話を聞いてみたら、彼はロサンゼルスで不動産会社を経営していたが、その後、日本に戻り小説家になったと言う。
今は歴史小説が人気のようで、かなりの売れっ子作家のようだ。
そして、帝国ホテルでセラピーの仕事もしているそうで、才能溢れる人のようだ。
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「そんなことって出来るの?」というのが、私の素直な感想だ。私は彼の書く小説より、彼の人生の方に興味がある。
(おまけの話)
行きがかり上、加治さんとその家族を連れて、壮瞥町の岩倉観光果樹園にサクランボ狩りに行き、その後、壮瞥温泉病院で盆踊りを見た。そこには菊谷市長初め、私の知っている人達が大勢来ている。
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その後に文七に行ったら、また大勢の知り合いが来ている。
前日にイコロ農園のパーティに参加した加治さんは、壮瞥温泉病院でも文七でも昨夜と同じメンバーに出会い、『この町はどこへ行っても同じメンバーばかりだなー』と驚いている。
そして居合わせたK社長に、『伊達は不思議な町だ。「アルトリ岬」は伊達市をテーマに書いた小説なのに、たったの100部しか売れなかった。こんなことは初めてだと出版社がビックリしていた。』と言っていた。
その100部の内の1部は私が買ったのである。
そういえば、その本を農家のSさんに貸したが、いまだに返してくれていないなー。
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(その後の話)
東京に戻った加治さんからお礼のメールが来た。
そしてそこには、『帰る時にアルトリ岬を見てから帰ろうということになり、岬に行ったら、なんとアルトリ岬の看板が無くなっていた。アルトリ岬の作者としては悲しいし、寂しい』と、あった。
これはなんとかしないといけないなー。