■バームクーヘンのミミ
市内の菓子店の「久保」にゴマ大福を買いに行った。 コテージにはお客さまも多いので、他にも水羊羹、アップルパイ、ロールケーキを買った。
すると女将さんが、『橋本さんはバームクーヘンは食べるのですか?』と聞くので、『食べますよ』と答えた。
すると女将さんは、『チョット待ってね。いま丁度、バームクーヘンが焼き上ったので、いいものを差し上げます』と言った。
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奥に引っ込んだ女将さんが何をくれるのかと思ったら、バームクーヘンのミミを持って現れた。
バームクーヘンは長い棒にケーキ地を巻き付けながら焼く。そして出来上ったら、棒から外して販売する長さに切る。
すると両端を切り揃える為に、どうしても不要なミミが出る。
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ミミというのは、どういうわけか何でも美味しいから不思議だ。特に巻き寿司のミミは絶品である。
食べるのはいつもミミばかりで、本体部分を食べられない身だと、これはストレスが溜まり美味しく感じないかもしれない。
でもいつも本体を食べている普通の人には、滅多なことでは手に入らないミミは貴重品である。
そんなこともあり、ミミは美味しいのだろうと思う。
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そんな私にとっては貴重品のミミを、プレゼントしてくれたのである。私は久保に8年通って、初めてこんな幸運に出会ったのである。
コテージに戻り、コーヒーを入れてミミを食べた。
商品のバームクーヘン本体より美味しかった。
そんな美味しいミミだけを作って売ったら、売れるかなー?
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(おまけの話)
ミミで思い出すのは、私はパンのミミである。
私の父は戦前ブラジル渡った。
でも、移民ではなく写真の勉強であった。
ブラジルから戻り、私の母と結婚した。
当時は珍しかった洋行帰りということも影響したのか、普通の家がご飯を食べている時期に、我が家の朝食はパン食であった。
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パンはミミを切り落として、トーストではなく蒸して食べていた。
すると毎朝、ミミが沢山余る。
母はそのミミを油で揚げて、それに白砂糖をかけておやつにして出してくれた。
あの時から私は甘いもの好きになったのかもしれない。
今ではそのせいで、メタボに苦しんでいる。