■月浦のあたり
洞爺湖温泉小学校は、月浦の小高い場所にある。
月浦は洞爺湖の西湖畔の地区で、温泉街からは離れている。
2000年の有珠山噴火の時は、洞爺湖温泉街の一郭に位置していたが、泥流の被害を被り、校舎は使えなくなってしまった。

校舎を再築するにあたり、「子供たちを安全な場所で学ばせたい!」という父母の思いが強く、以前の温泉街からは離れた月浦地区に2002年に新しく建てられた。
学校建設に当たっては、従来の場所に近いところに再築の場合は、国の補助が全て出るのだが、場所が大きく変わる場合は、70%の補助しか出ない。それでも父母の思いは「安全な場所に作ろう」ということで一致した。
今回洞爺湖を巡る学習会でこの学校を訪れ、校長先生に校舎の中を案内していただき、説明を聞くことができた。
次期噴火に備えての避難所の機能も併せ持つ学校として建てられた。広い体育館は、設置基準からすると1000人規模の学校であることを要求されるが、現在この学校の生徒数は46人である。避難所の機能を併せ持つということで、この広さとなっている。
家庭科の実習の炊事室はいざという時には、調理できる場所となり、シャワー施設や、バリアフリーの床とか、避難場所としての機能を見せていただいた。毛布とか食料の備蓄品はここには置かれてないそうだ。いざという時は、他の場所から運び込むとのこと。
校舎の2階からの眺めも素晴らしい。洞爺湖と中島、有珠山などが少し高みから眺められる。左手の大きな校庭の向こうには月浦森林公園の森が望まれる。
校舎の周りにはぶどう畑が緩い傾斜地に作られている。
先日10月末の道新(北海道新聞)の胆振版のニュースによると、
洞爺湖温泉小学校の6年生7人が、このぶどう園の収穫体験をした。ピークを迎えた
「ミュラー・トゥルガウ」という品種を、はさみを使って摘み取った。
この白ワイン用のぶどうは、月浦ワインの醸造所でワインに作られ、8年間貯蔵される。
子供たちが20歳を迎える時に振舞われるそうだ。ワインにするにはできのよい粒だけを使うため、子供たちは、痛んだ粒を一つ一つ取り除く作業を通じて、町の名産品を作るには丁寧な作業が必要なことを学んだ。
とある。
月浦ワインは、わたしも1回だけ飲んだことがある。美味しいのだ!でも高価なのだ!
美味しいものは高くてもしょうがないか!?(慨嘆)
子供たちが摘んだぶどうでワインを作り、8年間のタイムカプセルにして、成人した時に封を切るなんていうのは、なかなか乙な企画ですね。

ぶどう畑のある小高い丘の上からは、洞爺湖の中島の大きな三角形が真正面に見える。湖岸沿いには紅葉した様々な色合いの木々が横に並ぶ。道路を歩いていたら、「ギャーギャー」と鳴き声を出してカケスが月浦森林公園の方に飛んでいった。きれいな鳥だが、鳴き声はきれいではない。
月浦森林公園は、伊予大洲藩主加藤泰秋の別邸跡を整備した自然公園で、特に西洋カラマツの並木は北海道でも最も古いものと云われている。春には、カタクリ、エゾエンゴサク、ツワブキなどの花々が咲き、冬もスノーシューで歩いたり、小鳥を見たりするのによい場所である。隣り合わせにある月浦八幡神社の苔むした階段や石灯篭は年代を感じさせる。明治の開拓期からお祭りの時には故郷の神楽が奉納されたり、にぎやかなお囃子が響き渡っていたのだろう。
(2011-11-7記)