雪が降っても、いつもそこだけ雪がない。
別にロードヒーティングが入っているわけじゃない。そこに住んでいるのが「トミー」だからである。
このばあさんについて書いても、どうせ本人に告げ口する人もいないだろうから、ネタにしてしまおう。今年80歳になる、近所のばあさんである。

トミーは豊浦町出身。若い頃はかなり「イケてる」女性だったらしい。なにしろ65年前から洞爺湖で水上スキーなんかやってたんだから。そんな人が豊浦町におさまるわけもなく、若い頃から東京に出て、長らくOLというものをやっていた。そしてつい10年ほど前に親の住んでいた実家に戻ってきた。
とにかく元気なばあさんで、家には土間があるからそこでしょっちゅう七輪で魚や肉を焼いている。そして夏はラジオ体操を毎朝欠かさず、冬は雪かきに励んでいる。自治会では体育部長を務めていて、運動会では準備体操をみんなの前に立ってリードする。
こないだ、トミーの家の前の小さな交差点を通りかかったら、積もった雪が溶けてグジャグジャになったところを、トミーがスノースクレーパーで一生懸命除雪していた。かなり重い雪である。
「なんでそんなところまで雪かきやってんのさ」と聞くと、「これこのまま凍ったら轍が固まって、車とか大変なことになるっしょ!」って・・・まったくもって頭が下がる。自分の家の前だけじゃない。道路まで除雪してやろうとするその雪かき魂。結局、放っておくこともできず、仕方なく俺も手伝うことになる。そして、しばらくふたりで除雪して道路の轍をなくす。
「ふー……やっぱり二人だと早いねえ。ありがとねー。」
少し安心したトミーの顔をみられたので俺もうれしかった。
このトミーが自主的に家の前でやっている夏の毎朝のラジオ体操に、以前ウチのお袋と伯母が参加したことがある。トミーは二人がほぼ90歳と聞いたとき、二人の軽快な体の動きを認めていたトミーの顔に、一瞬ショックの色が浮かんだのを俺は見逃さなかった。きっと自分もまだまだだと思ったか?
時にはまるで少女のように手を振って挨拶してくるトミー。彼女の家の前を通る時、俺はいつもその元気な姿に会えることを期待してしまうのだ。
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