伊勢から北海道に帰ってきてまもなく、またいつもの通り、カミさんの思いつきで今回は朝から映画を観にいくことになった。
カミさんのお目当ては随分と前から上映され、話題作の「国宝」である。
俺はこの映画の情報も全くないまま室蘭の映画館に行った。もうたくさんの人が観て良い評価をしていると聞いた。
この日は、休日ということもあって予想よりも混んでいた。それでも「国宝」の上映室の入数は2割程度だった。

映画が始まるとすぐにストーリーに引き込まれた。
「国宝」は、歌舞伎役者の女形として、芸を極めるために壮絶な人生を歩む物語である。
3時間にもおよび大作であったが、実をいうととても感動した。
映画館で感無量になって涙を流したのは「永遠の0」以来だ。
永遠のゼロのときはそのストーリーに涙したのだが、今回はいささか違った。
歌舞伎の美しさと登場人物の迫力のある生き方を目にして、それに共鳴し、突き動かされた感じである。つまり、理性ではなく、感性として何かが伝わってきたのだ。多分これは、良い音楽の演奏や素晴らしい絵画を聴いたり観たりすることで引き起こされるときの反応の類なのだろう。
いずれにせよ、なぜ涙が出てくるのかわからないこの感覚は不思議だ。以前は本や映画、音楽などに涙することなどまずなかったのに、ここ数年かなり簡単に涙するようになってきたのは否定できない。家族の前では見せたくないという気持ちが強かった自分が、理性でこれを制御していたところもあったのだろうが、最近はそれも抑えきれなくなってきている。歳をとると涙もろくなるのだろうか。
この涙を流すという反応はよく考えると不思議な生理反応なのだが、そのあとには妙にスッキリするというのは、もっと不思議な現象である。
映画が終わって感動のまま、気を取り直して高砂町のうまいラーメンを食べて帰った。
カミさんというと、ずっとトイレを我慢して大変だったとのことらしい。
彼女の感想はあまり聞かなかったが、多分、感動は尿意には勝てなかったんだろうなと思った。

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