(2023年3月執筆)
5歳下の弟とは
小さい頃によく一緒に遊んだものだが、
僕が中学生になる頃には、
友人たちと遊ぶ時にいつもついてくるあいつがだんだんとうっとうしくなってきた。
ベッド下に隠していた僕のエロ本を、
なぜかあいつが盗み読んでいるのを見つけてひどく叱りつけたのはその頃のことだ。
そうやってだんだんと生意気になってくる弟とは、
歳をとるうちに少しずつ距離が離れていったような気がする。
長男だった僕は父親の期待を受けて育った。
厳格な父は学歴至上主義の価値観で凝り固まった、
ある意味とても視野の狭い人だった。
僕はどこかで父の価値観に疑問を感じながらも、
彼の敷いた路線を走るしかなかった。
その結果、
僕はそれなりの学校を出てそれなりの会社に就職したことで、
父の期待に応えることができたと思う。
一方、弟は僕よりもずっと学業に向いていなかった。
中学時代に既にドロップアウトをしていたのに、
父に学業を強いられ、
結局3浪して受験に失敗。
そしてアメリカに逃げて行き、日本には帰ってこなかった。
その後不法滞在のままアメリカに居座り、
ミュージシャンを目指したあいつは、
しかしなかなか花開くことはなかった。
そんなあいつを、
僕は努力の足りない落ちこぼれだと評価し、
半ば軽蔑する感情さえ持っていた。
しかしそれは、
どこかで疑問に思っていた自分の生き方を正当化するためだったと思う。

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