散歩に行く場所も段々と狭まっている。それはオミクロンのせいである。
オミクロンは感染力が非常に強いらしい。
幸いなことに、私は2年間も日曜日以外は外出して来たが、コロナに感染しなかった。
感染を避けるためには「なるべく人の集まらない場所」に行くのが一番である。

銀座の住所で「瓦屋根」は珍しい。
銀座といっても色々な場所がある。
メインは銀座通りだが、昭和通りを越えた歌舞伎座の辺りも住所は銀座である。
その奥は築地になり、古い町の面影が残っている。
そんなところに「故きを温ずねて」のものがある。今回は配線と配管である。
「ふるきをたずねて」は「古きを訪ねて」かと思っていたら、それは間違っていた。

いい感じに「緑青」がふいている。
この辺りに残る古い家は戦争でも焼け残り、多くの家の壁は銅板張りである。
それが風雨に晒されて、壁全体が「緑青(ろくしょう)」で覆われている。
若い人は「緑青」なんて、聞いたことも無いのではないか? 緑青とは「銅の錆び」である。
「銅は錆びるの?」と聞かれそうだが、鉄ほど早くないが錆びるのである。

「緑青」と「トタン」の錆びの違いが現れている。
今回は緑青ではなく、古い家の裏などに回り込むと見える昔の配管・配線を探す散歩である。
しかしこれは気を付けないといけない。家人に見付かったら、「怪しい者が家の裏を覗いている」と警察に通報されるかもしれない。配管も配線の現行の規格に合うように直されているのだろうが、据え付けられた場所と経路は昔と同じようだ。

他人事ながら「漏電」が心配になる。
古い緑青の出ている壁に現代の保安基準を満たした配線がしてあるのも、違和感があって面白い。
私は緑青の出ている家は中央区で指定して、保存した方が良いとさえ思っている。
既に住んでいない家も多いようで、そのまま放置すれば瓦解してしまうかもしれない。
人が住んでいる家は、きっとこの家に愛着があるのだろうと思う。

配線をもっと美しく出来ないかなー?
中央区は次々とタワーマンションが建設されて、古い町並みが消えて行く。
特に私の住む「勝どき」はタワーマンションだらけなのに、まだまだ建設計画がある。
勝どき駅の周りにも古い町並みが残っていて、そこには人が住んでいる。
私の勝手な願いだが、「マンションにしないで、残して欲しい」と思っている。
今回の「故きを温ずねて」でも、裏に廻っての勝手な撮影は出来なかった。

どうも配線が気にかかる。
論語の「温故知新」は現代訳で「故きを温ずねて新しきを知る」だが、その意味は『昔はどうだったか?ということを探求して、そこから今後のヒントを得る』である。
しかし今回の私の配管・配線を見て廻った散歩では、「古い物に、新しい物を加えている」ので、「故きを温ずねて新しきを知る」になるのかどうかハッキリしない。いずれにしても、テーマを決めて散歩をする私の旅は続きそうだ。

トタン張りに最新の電気メーター
(おまけの話)
銀座と言えば、「新しき」の代表的な場所だろうと思う。
次々と世界の最新のものが売られているし、新しい文化も垣間見られる。
私が自分でそのようなものを買うことは無いが、見ているだけでも楽しいものだ。
最近はマナーの悪い中国人観光客がいなくなったので、本来の落ち着いた銀座に戻ったように感じている。

高級寿司屋の名店「久兵衛」本店
でも裏道を歩いて行くと、古い日本にも出会えるのが嬉しい。
歴史を感じさせる日本文化の和風の品物をひっそりと売る店などに出会うと、そっと窓から中を覗いてみる。
そんな中に場違いかもしれないと思う店がある。しかも若い女性達が並んでいる。
場所は寿司の名店「久兵衛」のすぐ近くに、なんと「焼き芋屋」がある。しかも本格的な「壺焼き」である。初めてこの光景を見た時は、私は「え~!銀座に焼き芋屋?」と驚いた。

高級バー、クラブの近くで商売する専門不動産屋
家に帰って女房に話したら、『知っている。有名な店よ』と言った。
銀座で「焼き芋屋をやろう」と考えたオーナーには先見の明があった。
そして「故きを温ずねて新しきを知る」という論語の一説を思い出したのであった。
意味は多少は違うと思うが、「古いと思われていた焼き芋屋を、時代の先端を行く銀座という新しい場所で開業した」という点では、通じるものがあるのかもしれない。

店名「銀座つぼやきいも」(壺は全部で6個もある)
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