最近読んだ本に「世界葬祭辞典」というものがある。
私の場合は手当たり次第、題名だけで本を読む悪い癖があるようだ。
この本は私の予想に反してかなり専門書に近く、少し持て余した。
しかし他の本と違い序説が一番面白く、【最近は「親孝行 したい時に 親はなし」ではなく、「親孝行 したくないのに 親がいる」】という解説が的を得ていて可笑しかった。

「世界葬祭辞典」・・・★
私の父は今から54年も前に亡くなっている。母は22年前に亡くなっている。
親孝行に関して言えば、私は父にはほとんどしていない。
あまりに早く56歳で亡くなったので、親孝行をする時間が無かったのである。
「人は必ず死ぬ」とは分かっていても、自分の親は死なないような気がしていた。

ブラジルに向かうサントス丸の船上の私のオヤジ (85年くらい前の写真)
そこで父に出来なかった分を、母に親孝行をしようと思った。
しかし「なにが親孝行か?」が分からなかった。
会社経営を学ぶ時間も無く父は逝ってしまったので、私は素人経営で苦労した。
経営が分らないので仕事が忙しく、また結婚をしたこともあり母親孝行を出来なかった。
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我が家の愛猫「ペッパー」は狭いところが好き。野良猫だったので、親は分からない。
しばらくして落ち着いて来たので、母親をハワイ旅行に誘った。
ところが根っからの倹約家だった母は、「もったいない」と言って断った。
私は以前に父が元気な頃に、母をハワイ旅行に誘って断られたことを知っていた。父が亡くなった後に母は、「あの時、ハワイに一緒に行っていれば・・・」と後悔していたのを知っていたからだ。

コロナで亡くなった「志村けん」の日本酒入荷。
倹約家の母に親孝行をするのは難しい。
忙しい私は普段の生活では、なかなか親孝行が出来ない。
せめてと思い、別居していた母には女房から美味しそうなものを届けさせていた。
母は倹約家だったので、自分では買わない本マグロの刺身などを喜んでくれた。私は母に「もう残りの人生は長くないので、美味しい物を自分でも買って食べて」と言ったが、最後までそうはしなかった。

「はとば公園」のモニュメント(築地)
そしてしばらくして、私は母を香港旅行に誘ったのである。
その時は生まれて初めての海外旅行で、母がとても喜んだのを覚えている。
そしてまた「あの時、お父さんとハワイに行っていれば良かった」と後悔していた。
その後、母の友人達は次々とお先に逝ってしまい、母は友人がいなくなってしまった。最後の方では「つまらない」が口癖だったが、ある日の朝にトイレに起きて、ベッドに戻る途中で心臓発作で亡くなっていた。
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私のことだが、心配がある。
体のアチコチが少しずつ悪くなって行くのが分かる。
しかし決定的な悪いところは無い。心配は「長生きし過ぎる」ということである。読んだ本の序説にあるように「親孝行 したくないのに 親がいる」が私のことになるのを恐れている。

近年は犬も高齢化で乳母車に乗る。
(おまけの話)
先日、「チャップリンとヒトラー」という本を読んで以来、チャップリンのことが気になっていた。
彼の言葉に映画人らしく「Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot」というのがある。
日本語では「人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇である」であるが、果たして私の人生は喜劇だったろうか?
冷静に自分の人生を見つめ直すと、チャップリンの言うことが正しいようだ。

「チャップリンとヒトラー」・・・★★★
私とオヤジとの関係で、一度だけチャップリンに関わったことがある。
それはチャップリンの映画「ニューヨークの王様」を日比谷まで見に行ったことである。日本で映画が公開されたのは1959年とのことなので、私が高校生の時だったらしい。
今では粗筋さえ覚えていないので、ネットで調べて驚いた。
アメリカの「赤狩り」に対する強烈に皮肉なストーリーだった。
オヤジはあんな映画が好きだったのか?、それとも筋書きも分からずに見に行ったのか? 今になっては、もう分からない。

散歩の犬も疲れたら乳母車に乗る。
自分の親孝行ではなく、オヤジの親孝行に付いて考えてみた。
オヤジは若い頃にたった1人でブラジルに渡り、ずいぶんと色々な経験をしたようだ。私から見れば、いわゆる波乱万丈の人生で親不孝者とも言える。
結婚をして独立し、仕事も順調になり親孝行をしたいと思ったのか、私は時々、用事を言いつかった。
それは立川の中華料理店で「鯉の丸揚げ甘酢餡掛け」を買って、八王子のオヤジの父に届けることだった。 オヤジは私を使って、やっと親孝行をしたのである。

最近だが、マンションの1階に出た「キッチンカー」
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