銀座7丁目から裏通りを歩いて、勝鬨橋まで行った。
時々は必要に駆られて表通りを通ることもあるが、面白いのは裏通りである。
歌舞伎座の向い側に、ビルに囲まれた細い路地がある。
この通りには高級和食店が何軒かあり、その中の1軒で思い掛けないものを見た。
店先に青い四角い網が吊るされているので、近寄って中を覗いてみた。
するとそこには「カラスミ」が入っていた。
カラスミはボラの卵巣で、それを塩漬け・塩抜きして乾燥させるとカラスミになる。
店先で乾燥させてお客に出すのだろうから、「地産地消」に近いのだった。

晴海通りを渡り、築地6丁目の裏通りに行く。ここには有名な古い長屋が現存している。
中には店として営業しているところもあるようだが、昼間はただの長屋に見える。
私がそこを通ると、外国人の報道関係者らしき3人組が見えた。
1人が長屋を指さしてなにか言っている。あとの2人はビデオと音声の係だった。
撮影している人達を撮影するのはやり難いので、少し離れて陰から撮った。
どこの国の人か分からなかったが、これがどこかの国でどのように放送されのだろうか?

古い長屋を通り越して角を右に曲がる。
すると左側に「築地食糧販売㈱」という、なんとも時代錯誤のような店名の米屋がある。
私の世代だと戦後の食糧難の時代を過ごして来たので、「食糧販売」などと聞くと「配給米」を思い出す。
ネットでこの会社を調べたら、なんと1856年創業だった。
そして『食通の街、築地で鍛えられた商品を見極める目利きで選び抜いた、優良産地の玄米を精米のプロとしての技術を身につけた「お米マイスター」が・・・』
『お客様に必ずご満足して頂けるお米をご提案いたします。そしてなによりも創業以来、受け継がれている、お客様本位の企業理念を代々大切にしております』と真面目そうな説明があった。

途中にも古い商店などがあるが、それを横目で見て先に進む。
そして右側にある「あかつき公園」に入った。メタセコイアは紅葉していたが、まだ少し早い感じだ。葉が落ちて、地面いっぱいに絨毯のように敷き詰められた光景が私は好きだ。
メタセコイアの林を抜けた右側にカリンの木が4本あり、黄色の実を付けていた。
大きな木でたくさんなっているので、お土産に実を取りたいが手が届かない。
地面を見たらカリンの実が6個、落ちていた。それを拾って家に持ち帰った。
カリンは良い匂いがするし、長持ちするので女房に喜ばれた。
また近い内に拾いに行こうと思っている。

「あかつき公園」を抜けて、聖路加国際病院の前の道路に出る。
この道の両側に植えられた「マロニエ」の木は、いつも赤とオレンジ色に色付いて綺麗である。ところが今年はどうしたことか、色付く前に枯れて落ちてしまっている。
夏の暑い日が、いつまでも続いたのが影響しているのかもしれない。
自然というのは割合に繊細なもののようで、ちょっとした気候変動の変化でも影響を受けるようだ。残念だが来年に期待しようと思うが、私の方が来年まで大丈夫か?

プラタナスの道路を晴海通りに向かって歩く。
すると背の低い街路樹が植えてあり、枝にピンク色の実がなっているのが見えた。
実が半分から割れて、中の種が落ちそうになっている。
この木は「みゆき」というらしい。夏に黄緑色の花を咲かせ、それが緑色の実になる。
そして初冬にピンクの可愛らしい実になるのである。
ピンクの実になる前は気を付けて見ないと、知らずに通り過ぎてしまう。

「マユミ」を見ながら進み、晴海通りに出る前に左手に「はとば公園」が現れる。
石段を少し上った広場に、銀色の球体がある。手前に穴が1つ、反対側に2つの穴が開いている。人間とは可笑しなもので、穴があると覗いてみたくなるものだ。
穴の向こう側には隅田川が見える。春はこの公園は桜が綺麗だ。
初冬のいまは桜の葉の紅葉と銀杏の葉の黄葉で、枝越しの球体「my sky hole」が美しく映える。球体の前に立つと、ビルや自分が歪んで映るのが面白い。
右手近くには勝鬨橋が、塗装工事の真っ最中だった。

(おまけの話)
「貧乏ゆすり」
東銀座のホテルで株主総会があったので、出掛けて行った。
だいぶ前にIPOに1000株を応募したら、補欠で100株が当選したので購入した株式である。現在の株価では1万8400円のマイナスであるが、私の今までの経験から「補欠当選」は購入してはいけないのだ。人気が無いから補欠募集なのである。
総会の後で近くのTULLY’Sでお茶をした。少し経った頃に、隣のテーブルに若いカップルが座った。ところが男が貧乏ゆすりを続けている。
驚いたことに女の方は、膝の開閉を続けている。
「なんなんだ?」と思ったが、注意も出来ない。変な癖のカップルだ。
コーヒーとサンドイッチを食べ終ると出て行ったので、やっと落ち着いて本が読めた。

「事件か?」
築地6丁目のバス停の前の時計屋に、警察と消防が集まっている。
「なんだろう?」と思ってみていたら、消防隊が梯子を持ち出し2階の窓の2ヵ所に架けた。
そして消防団員が梯子を上って行ったが、部屋の電気は点いているが左の窓は開かない。右の窓は幸いに鍵が掛かっていないらしく開いて、消防団員が部屋に入って行った。
しばらくすると1階のドアが中から開けられて、消防団員が入って行った。
私はかなり待ったが動きが無いので、私は先を急いだ。多分、2階に1人で住んでいる人が消防に電話したのだろう。
誰か他に同居者が入れれば、入口のドアを開けたはずだ。
事件か? 事故か? 病気か? その時は分からなかった。

「ふぐ刺し」
消防が来ていた少し先の「天竹」という名の店に、ランチを食べに入った。
1年ぶりくらいの気がする。混んでいるらしく、初めて2階の広間に通された。
2階の席も満席近かった。私はいつもの「かき揚げ丼」を注文したら、1000円に値上がりしていた。
私がかき揚げ丼を食べていると、隣に白人の3人組が座った。男2人、女1人であり、ロシア人のようだ。彼らはメニューを一生懸命に見ながら、店員に写真を指差し「ふぐ刺し」2人前と、「ふぐ天丼」を3人前オーダーした。
私が彼らの支払金額を密かに暗算して見たら、3万2550円になった。
この店はふぐ屋なので、彼らは知っていて来たようだ。「うどん屋」などに来ない3人で、大変によろしい!

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北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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銀座には超近代と超古(イニシエ)が調和しながら共存していますね!いたずらにその古を破壊せずに存在を許している日本が好きだ!昨日私の誕生祝いを娘と孫たちが六本木ヒルズのイタリアンレストランで開いてくれたが、余りにも現実離れをした六本木ヒルズの夜の雰囲気に疲れ果ててしまった。歳を取ると古い落ち着いた中でゆっくりと暮らすのがいいのだろう。
級友の嵐山君は言った言葉をお祝いの席で披露した。
『老いて ますます 明るい不良』
勝手に生きなきゃ自分の人生もったいない。
小料理屋の前に吊るされた「カラスミ」乾燥中:
銀座や築地のど真ん中でカラスミを干している光景は、なにか異次元の世界というか、予想せぬシーンで、新鮮かつ懐かしい。そういえば、六本木の裏通りの小料理屋が店を開ける前の昼間、アジを干しているのを見たことがある。しかしそれはずいぶん昔の事だが。
ちょっとした小料理屋には、そういう日常的伝統があるのだろう。