私がホーチミン市の日本語学校で先生をしていた時に、親しくしていた中に本職のN先生がいた。彼女から連絡があり、彼女の息子が日本へ観光に来ることを知らせて来た。
彼女は先生、その亭主は貿易商で、ベトナムではかなり豊かな部類に入る。
みんながバイクに乗っているのに、N先生だけは自家用車で通勤していた。
彼女からの連絡では『6月25日の深夜1時に、羽田空港に着く』とあった。
何時に着くかより、私には『何時に我が家に来るのか?』の方が重要だった。
しかし最後までその連絡は無かった。私は息子は羽田空港で仮眠をして、『早くても午前10時くらいに来るかな?』と考えていた。
ところがである。息子のPhongさんは、驚くことに午前6時30分にマンション前のバス停から私にメールを送って来た。『いま着きました』・・・と。
出だしから「これでは」と、先行きが思いやられたのであるが、その話は(おまけの話)で。
初めて会ったPhongさんは普通のベトナム人らしくなく、頑張ってお洒落な感じを出している。茶髪、ピアス、金の細いネックレス、靴はアシックス、リュックはリーボックで固めている。でも残念ながら、あまり垢抜けしていない。
私は3年前にホーチミン市に行ったが、その時はそんな格好の若者は見掛けなかった。
その後、ベトナムも変ったのか、或いは彼だけなのかは分からない。
父は貿易商、母は日本語学校の先生なので、経済的に恵まれているのだろう。
彼と同じ年齢の若者が日本に実習生として働きに来ている中で、親の出したお金で日本に観光に来ている。午前7時前では家族は寝ているし、ゲストルームは午後3時にならないと入れない。仕方ないので荷物だけ玄関に置かせて、朝食に出掛けて行った。
以前に彼の母が来た時に案内し、大層気に入った店だ。
和朝食を一緒に食べたが、箸の文化の国から来たのにご飯をスプーンで食べていた。
私が年をとったせいか、色々と気に入らないことがある。
でもこれは日本とベトナムに共通したことだろうと、グッと我慢する。
食後はそのまま東京観光に行った。彼は日本語は出来ないし、英語はかなりベトナム風に訛っている。
例えて言えば、青森県の人と鹿児島県の人が話しているような感じで、50%くらいしか私は分からない。だから一生懸命に聞かなければならないし、こちらの言うことも分かっていないようだからとても疲れる。
メールでは立派な英文の文章を送ってきていたのだが、それはGoogle翻訳を使っていたのだろう。彼が事前に送って来た観光場所に、外国人観光客に人気の築地市場、歌舞伎座、銀座、東京駅、皇居が入っていなかった。そこで近いこともあり、そこを案内した。この日の気温は31.8度と高く、歩く距離も長いので、私は疲れた。
どこへ案内しても、特に感想も言わないし、「良かった」とも言わない。
案内役としてはチョット寂しい。
東京タワーに行った時は私は展望台に上らないので、待ち合わせ場所を決めた。
私が待っていたら、アナウンスが聞こえた。『橋本さま、お連れ様がチケット売り場でお待ちです』には驚いた。ビックカメラにフィルムを買いに行った時は、迷子になった。彼から『Where are you?』とメールが届いたので、私の待つ場所を知らせた。
こんなこともあったせいか、彼は『昨夜は1時間しか寝ていないので、眠いので帰りたい』ということで、マンションに戻ったのである。私も暑いので助かった。
(おまけの話)
午後3時になり彼をゲストルームに案内して、私は自宅に戻った。
会話と暑さで参ってしまった私は、シャワーを浴びて少し寝た。
午後7時少し前に、彼は我が家にやって来た。
ゲストルームで少し寝たせいか、元気になったようだ。
お土産にベトナムコーヒーと、ココナツのクッキーを持って来ていた。
私はベトナムのコーヒーは好きだが、ベトナム風の濃い淹れ方は嫌だ。
翌日からは1人で観光に行くと言うので、私は心配だから『帰って来たら、メールで知らせろ』と伝えてあった。ところが午後9時になってもメールが来ない。そこで催促のメールを送ったが、それにも返信が無い。心配で朝までウトウトして過ごしてしまった。
翌朝になり、母親に事情を書いてメールを送信した。でも母親からも返信が無い。
日本の常識とあまりに違うことがあり、私は戸惑うばかりだ。
彼が特別なのかどうかは、私には分からない。
そこで日本支社のS子さんに、事情を書いてメールを送った。
するとすぐに返信が来て、『早朝に母親と電話で話した。昨夜は12時過ぎにゲストルームに戻ったようだ』と書いてあった。
どうやら私とあまりに年齢が離れているので、Phongさんは私に近寄り難いようだ。
それにしても初めて来た日本で、2日目に深夜まで何をしていたのだろう?
これを問い質すと更に変になるといけないので、触れずにおこう。そして29日の朝に、京都に向かって出て行った。なんとか問題無く、日本の旅を楽しんでもらいたい。
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