■紋別岳 花の山
紋別岳が花のシーズンを迎えている。
いま見ごろなのがシラネアオイである。薄紫の花弁が大きめの清楚な花である。
このシラネアオイがこのあたりの山では、紋別岳が秀逸だそうである。
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この近辺の山では、室蘭岳の西尾根、オロフレ山、来馬岳、カルルス山、尻別岳などでシラネアオイは見られるそうだが、紋別岳は中でも最も多くの花が見られる場所だそうだ。
6月2日に知人夫婦とわれわれ夫婦の4人で訪れた。わたし以外は初めてこの山のシラネアオイを見るメンバーである。
1合目あたりから登山道沿いにシラネアオイの株が見られた。ちょうど咲き出して見ごろの花が迎えてくれる。何株かが群れて大きめな株になっているものもあれば、一株だけで咲いているものもある。登山道の脇に、「見てください」という感じで位置しているのが目に入るが、よく見ると笹薮の中にも、薄紫の花が咲いていることもある。これは笹を刈ってあげると、もっと増えていくのかなと思わせる。
樹林帯の中の7合目までの間、ちょこちょこと登山道脇にシラネアオイの花株は続いている。奥さん方も花に誘われて、登りのつらさを忘れているように感じた。ちょっと歩くと、
「あら、またここにもあるわ!」という感じで花株が出てきて、少し蕾み様で紫の色が濃いものもあったりする。葉も新鮮な緑色をして、薄紫の花を引き立てている。
「やっぱり、自然に咲いているものは活き活きしているね!」
3合目の一望台で一休みする。薄曇りの割には遠くまで望める。残雪も少なくなってきた羊蹄山、ニセコアンヌプリ、昆布岳、もちろん有珠山、昭和新山、洞爺湖の中島なども望めた。初めてこの風景を見ると、少し登っただけでも日常とは違うたくさんの遠くのものに出会えた感じがするものだ。
7合目の樹林を抜けるまでは、こんなように花を楽しみながらたどり着いたという感じである。7合目のいっぷく広場の直前の木々の中では、うぐいすの声がごく近くから聞こえてくる。今年のうぐいすなのか一生懸命にさえずってくれている。ケキョケキョと長くいい声を響かせてくれる。思わず「お上手!」と云ってあげたくなる。
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“シラネアオイ”という花の名は、もともと日光白根山に多く見られた立ち葵に似た花から名付けられたようである。花色は、淡い青紫というか少しピンクが入ったような色味のものもある。つぼみの時には咲いたときよりも濃い目の色を持つ。また白花種のものもたまに見かける。
花弁は紋別岳では4枚のものが多いが、他のところでは5枚、6枚の花弁をもつものもあるようだ。
実は、このあたりの情報は、わたしの山の知り合いのOさんに拠るところが大である。
今回の紋別岳山行のきっかけも、Oさんとの情報交換の中で「いまシラネアオイを見るなら、紋別岳がお奨めですよ。」とサジェッションをいただいたことによる。
数日前にも、紋別岳シラネオアイの丘を訪れたOさんは、2日あたりがそろそろ一番の見ごろであるという予感を持っていらした。
その後のOさんとのメールのやり取りの中でも、
「わたしの知っている限りで、北海道でシラネアオイを今まで見た中で、この2日の日の紋別岳のものが一番に素晴らしかった!」と述懐されていた。
われわれ4人組は、幸運にもそのような時期の、シラネアオイのドンピシャのときに巡り会えたのだ!
山なので、低いところは早くに咲き、高い山頂側は咲く時期が遅くなるが、ちょうど平均的に咲き具合がベストの時に出会えたということだろう。
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やはり山に咲くものは、山の登山道の周りにあって風景にとけ込む。登っていったから出会えた、良かったというという気持ちにさせてくれる。みんなそういう意味で、下りで膝ががくがくになりながらも、「来て、良かった!」という気持ちになれた。
これからの季節、紋別岳はいろいろな花が交互に咲いていくそうだ。これからはハクサンチドリが見ごろを迎えていくことになるそうだ。
◆一番初めの写真は、Oさんが6月2日に紋別岳で撮ったものを、ご好意で使わせていただいた。
(2010-6-3記)