■老いる覚悟
同期のY君から、「老いる覚悟」という本をプレゼントされた。これはどういう意味か? Y君自身がこの本を買って読んだのだから、彼は自分に「老いる覚悟」を言い聞かせているのかもしれない。
作者は森村誠一で、年齢は78歳である。
この本では定年後の長い時間をどう過ごすか?、その為にはどのような覚悟がいるか?を解説している。
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私は60歳になるまでは、老いなんて全く感じなかった。
それが60歳を過ぎてから少しずつ感じ出したので、関係者に迷惑を掛ける前にと思い、自分で決めて61歳で引退した。
でも、「老いる覚悟」はしたことがない。
覚悟なんてしなくても、老いて行くのである。
他人から「老いる覚悟」を教わらなければならないほど、我々の世代はバカじゃない。
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知り合いの後期高齢者の女性は若さを売り物にしている。
その為の努力は相当のもので、お金を掛けて美容、整形、サプリメントとなんでもやる。
そのせいか、見た目は若く見える。
でも、立ち上がって歩く姿は、どう見てもバアサンである。
これも見苦しいし、悲しい。
このような人は老いる覚悟が出来ていないのである。
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私は69歳の誕生日の5日前に、長年住み慣れた小金井の自宅を売却して、中央区の高層マンションに引越した。
そこでは目新しいことばかりなので、老いる暇が無い。
ここへ来て、老いるスピードが少し減速したように感じている。
私は森村誠一にお願いして、次に書いて欲しいのは、「ボケる覚悟」である。
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(おまけの話)
私のオヤジは56歳で亡くなったので、老いの覚悟をする暇も無かった。色々とやり残したことはあると思うが、今になって私から見ると幸せな人生だった。
私の小学校の担任の女のK先生は、厳しかった。
女だてらに、悪さをした私に黒板用のチョークを投げつけた。
その先生が定年を迎えたら、やることが無くなったのか、急に衰えて近所を徘徊するようになった。
その先生もそれから間もなく、アチラへ行ってしまった。
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今から50年くらい前はサラリーマンの定年は50歳で、普通はそれから10年もしない内にお迎えが来てアチラに行ってしまった。
だから今のような解決困難な問題なんか無かったのである。
「日本は長寿世界一」なんて言って喜んでいるが、そんなのは決して目出度い事じゃないのである。