■格安熱海温泉慰安旅行
マンションの住民で割合いに親しくしている人にXさんという人がいる。
彼は76歳で、昨年の春に風呂場の事故で奥さんを亡くした。
その後、今年になり老衰で母を亡くした。
そんなXさんを慰めようと、私より20歳も若いYさんと一緒に温泉旅行を企画した。

今回の温泉行きの企画は、現役サラリーマンのYさんにお任せした。
旅の往復は彼の車で、ガソリン代などを割り勘で利用させてもらうことになった。
そして彼が企画して私に知らせて来たのが、熱海の「四季倶楽部熱海望洋館」だった。初めて聞く名前の旅館なので、ネットで調べてみた。

すると説明文には「四季倶楽部の基本コンセプトは、優良な資産である企業保養所を幅広い方々にご利用いただき、その施設自体の運営損益を改善しようというものです」とあった。
どうやらバブル崩壊後、大手企業が最初に経費削減に取り組んだ中で、企業所有の保養所を借り上げて、一般に貸し出す事業を行っている会社と分かった。

Yさんからの連絡メールには1泊2食付き、1人9000円とあった。
今どきはビジネスホテルでも食事が付かなくても9000円の時代に、2食も付くとは驚きで「大丈夫かな〜?」を通り越して、逆に興味が沸いた。
しかし値段より問題なのは、今どき驚くことに2人は喫煙者なのである。

午前中に一仕事終えて、Yさんは午後12時30分にシーマに乗ってやって来た。マンション前を出発し、首都高速、東名高速、厚木・小田原道路経由で熱海に着く。約2時間15分のドライブだった。
チェックイン時間には早過ぎたので、来宮神社を参拝に行く。
私は何回も熱海に行ったことがあるが、来宮神社には行ったことが無かった。

「四季倶楽部熱海望洋館」は熱海駅の山側にある。
すれ違いも難しい細い道路をかなり登ったところに、その旅館はあった。
チェックインしてみたら、意外と小奇麗で、見晴らしも良い。早速、温泉に行く。そして午後6時から食堂で夕食となったが、イタリア料理が出て来てビックリした。

我々が行ったのは平日だったせいか、お客は我々を含めて7人だった。
フロントで受付をしていた男が、夜はウェイターだった。
どうやらこの旅館は、彼とコックの2名で超合理的に運営しているらしい。
ウェイターに聞いたら、「私は韓国人で正社員です」と言っていた。
今回の格安旅行で、私の知らない世界を垣間見た。

(おまけの話)
2日目の朝は午前6時に起きた。まだ2人が寝ているので、1人で温泉に行った。温泉から戻り2人を起こし、7時に朝食会場に行った。
昨夜の夕食がイタリア料理だったから、朝食は当然のように洋食だと思った。ところが純粋な和食で驚いた。焼き海苔、納豆まで付いて来た。

午前8時にホテルを出た。そしてYさんの御贔屓の「干物屋」に行く。
買い物をする前に、干物の試食がある。
店頭の七輪の上に、自分で冷蔵庫から出した小さく切ったアジの干物を乗せる。まだ開店間際だったので、七輪の中の練炭の火が弱く、なかなか焼けない。

やっと焼けたので、それを食べた。そしてお土産に各自が干物を買う。
その後は一直線に東京に戻る。東名高速は川崎ICを過ぎた辺りから混み出す。
やっと月島まで着き、ガソリンスタンドでハイオクガソリンを満タンにする。そして旅館代、高速料金、ガソリン代を割り勘で清算する。
2日間の温泉旅行で、1人分はたった1万3500円だった。
